ニコン製デジタル一眼レフカメラで使用できる18-200mmという高倍率ズームレンズには、ニコン製とレンズメーカ製があります。果たして両者の描写力の違いは?レンズキット用レンズ18-70mmとの差は?

マクロ撮影での比較

高倍率ズームは便利!でも…

タムロンやシグマといったレンズメーカから、ズーム倍率11倍という高倍率ズームレンズが発売されています。一本のレンズで必要な画角をカバーできるためレンズ交換の必要もなく、レンズ交換の間にシャッターチャンスを逃した、なんてこともありません。特にデジタル一眼レフではレンズ交換時のゴミ問題の心配も若干ながら緩和することができます。

とはいえ、心配なのは画質。大概最初に買うレンズはキットレンズですが、2本目に買うレンズとして11倍ズームレンズを考えると、ズーム倍率が3,4倍程度のキットレンズと比較したときの画質低下が気になるところです。便利さはわかっていながら、このために導入を躊躇されている方も多いと思います。

Nikonユーザのさらなる悩み

ニコンもレンズメーカー同様Nikon AF-S DX VR ズームニッコール ED 18-200mmという高倍率ズームレンズを発売しました。しかも、手振れ補正つき!さらに、レンズメーカー製の18-200mmレンズのテレ端開放絞りがF6.3である一方、テレ端開放絞りをF5.6としています。暗くなりがちなズームレンズのテレ端が少しでも明るくなるのは歓迎ですし、画質の向上も期待できます。

しかし、問題なのは実売8万円というお値段。いくら4段分の手振れ補正つきとはいえ、タムロン、シグマといったレンズメーカー製の18-200mmズームの倍の値段です。ますます画質の差が気になってしまいます。

画質を比較してみました

手元にニコンとタムロンの18-200mmズームレンズがあったので、両者およびキットレンズとの画質を比較してみました。比較したのは以下のレンズです。

撮影条件は以下のとおり。

なお、Nikon AF-S DX VRズームニッコール ED 18-200mm のVRはオフにしています。

18mm

絞り開放では、中央部ではNikon18-200が最もよく、僅差でNikon18-70。Tamron18-200は描画が甘い。周辺部では、解像度はNikon製レンズでは同等ながらNikon18-200の方が色収差が多い。Tamron18-200は像の流れが多い。F11ではTamron18-200も中央部の描写はNikon製レンズと同等となるが、周辺部は劣ったまま。

F開放
レンズ 中央 周辺
Nikon 18-200
Tamron 18-200
Nikon 18-70
F11
レンズ 中央 周辺
Nikon 18-200
Tamron 18-200
Nikon 18-70

35mm

中央部では18mmと一転してTamron18-200がNikon18-200の描写を上回る。一番シャープなのはNikon18-70。とはいえ周辺部ではTamron18-200は流れがひどい。周辺部もNikon18-70がもっともシャープ。F11では中央部はどれも同等、周辺部はあいかわらずTamron18-200の像の流れが多い。

F開放
レンズ 中央 周辺
Nikon 18-200
Tamron 18-200
Nikon 18-70
F11
レンズ 中央 周辺
Nikon 18-200
Tamron 18-200
Nikon 18-70

70mm

開放では中央部はNikon18-70>Nikon18-200>Tamron18-200。周辺部はNikon18-70とNikon18-200が同等だが色収差はNikon 18-200の方が少ない。Tamron 18-200は像が流れている。F11の中央部はNikon18-70がもっともシャープで、次いでNikon18-200とTamron18-200が同等。Tamron18-200の周辺部が流れているのは相変わらず。

F開放
レンズ 中央 周辺
Nikon 18-200
Tamron 18-200
Nikon 18-70
F11
レンズ 中央 周辺
Nikon 18-200
Tamron 18-200
Nikon 18-70

130mm

開放、F11ともにNikon18-200の方が解像度が高い。加えてNikon18-200は色収差がよく補正されている。

F開放
レンズ 中央 周辺
Nikon 18-200
Tamron 18-200
Nikon 18-70
F11
レンズ 中央 周辺
Nikon 18-200
Tamron 18-200
Nikon 18-70 画像なし 画像なし

200mm

こちらも130mmと同様、Nikon18-200の方が開放、F11ともに解像度が高い。

F開放
レンズ 中央 周辺
Nikon 18-200
Tamron 18-200
Nikon 18-70 画像なし 画像なし
F11
レンズ 中央 周辺
Nikon 18-200
Tamron 18-200
Nikon 18-70 画像なし 画像なし

評価まとめ

以上の評価を以下の表にまとめて見ました。記号の○、△、×は相対評価ですので、×が「使い物にならない」という意味ではありません。

焦点距離 絞り Nikon 18-200 Tamron 18-200 Nikon 18-70
中央 周辺 中央 周辺 中央 周辺
18mm 開放 × ×
F11 ×
35mm 開放 × ×
F11 ×
70mm 開放 × ×
F11 ×
130mm 開放
F11
200mm 開放
F11

Nikon 18-200は、35mm開放での描画でTamron18-200に劣るものの、それ以外の焦点距離ではTamron18-200を上回っています。キットレンズであるNikon18-70との比較でも、一部の描写でNikon18-200が上回っています。

Tamron 18-200との比較であれば、手振れ補正つきであることを考えれば値段分の差は十分にあるといえるでしょう。それではNikon18-200買ったときにキットレンズを処分してもよいかと言えば…、キットレンズは手元に残しておいたほうがよいのではないでしょうか。キットレンズは軽いし。